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踏み出す一歩
―――何故ここに来ようと思ったのかはよく分からない。
北条家。
この家を離れて、一年しか経っていないのに随分と離れていた気がする。
意識的にか無意識的にか、
それほどまでにこの一年、家に近寄っていなかった。
良い思い出が全くといってない、北条沙都子にとって最も苦手な場所。
両親との不和、
叔父夫婦の虐待、
そして兄に庇われていたあの日の自分。
思い出したらキリが無いつらい思い出の数々。
それらの象徴であるこの家に北条沙都子は戻って来た。
―――でも、ここに来なくてはならないと思った。
六月二十日、綿流しの日。
恐らく私の人生の中でこれから先、あれほど慌しく、忙しい、不思議な日は無いだろう。
そんな綿流しの日を越えてから、梨花は変わった。
以前の梨花は表面上、楽しそうにしていても心の奥底でどことなく冷めていた。
いくら楽しそうに騒いでいても“諦め”の様な感情を持っていた。
だが、あの綿流しの日から梨花の心の奥底にある、冷めていた部分が消えた。
物事を一つ一つ、余すことなく、楽しむように。
そんな梨花を見たら変わらなければならないと思った。
梨花が変わったから私も変わろう等と言う事ではなく。
あの日から、そうしなければならないと思った。
―――あの、綿流しの日を越えてから。
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