届かぬ思い

―――今日は女の子が自分の思いを男の子に伝える日―――
―――喜び、悲しみ、様々な思いが入り混じる日―――
―――彼女もまたその渦中にいた―――


―――ただ彼への思いを忘れないために形にしたモノ
それは自分の誓いであり
それと同時に自分を戒めるためのモノ
ただそれだけのために作ったモノ
・・・それだけだったはずなのに―――

「っうう・・・さ・・・とし・・・・・・く・・・っん」

―――形にし、彼のことを思うだけでこみ上げてくる思い
その様々な思いが混じり合う
あの日から代わりに沙都子を守ると決めた日から口にしなかったあの言葉―――

「会いたいよ・・・悟史君」

―――そう、その言葉は彼を思う誰もが思っている言葉―――

「・・・会いたいよ・・・も・・・っとお話したいよ・・・悟史君」

―――誰もが思って誰も口にしない言葉―――

「悟史君・・・悟史・・・くん・・・さ・・・とし・・・くん」

―――暗黙の了解―――

―――それを今だけ破る―――

―――もっと彼の顔を見たかった
もっと彼を困らせたかった
・・・もっと彼とお話をしたかった
・・・・・・もっと彼に頭を撫でてもらいたかった
・・・・・・・・・もっと・・・もっと、もっともっと・・・・・・もっと―――

―――ああ、もっと単純なことがしたかった―――

―――そう、それは―――

―――もっと彼のそばにいたかった―――

「っうう、っく・・・うう・・・・・・」

―――本当に待っていれば帰ってくるのか
本当に再会できるのか
本当に彼は生きているのか―――

―――不安になる―――

「・・・・・・悟史君、私・・・駄目かも」

―――そして誰かが現れた―――

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